2016年 9月 & 10月

院内でオープン予定の部署としては最後のユニットとなった新生児室や、スタッフに根付き始めた“心のこもったケア”をご紹介いたします。



©Adri Berger
オープニングで、設立に貢献したベッキー元看護部長からご挨拶(左から3番目)



©Adri Berger
早速小さな患者さんが入院してきました。


8月の手術室オープンに引き続き、10月には新生児室がオープンしました。建築前には救急室の中に配置する予定だった新生児のベッドでしたが、新生児の患者さんが予想以上に多く、また一般病棟では新たな感染症を発症してしまいかねないという心配から、計画を変更。器械倉庫とトリアージのために確保してあった場所を急遽新生児室へと作り替えました。お部屋自体を大きく変えることは不要でしたが、新生児ケアに必要なベッドや機械の不足分を取り揃えました。何よりも大変だったのは、スタッフ教育です。新生児の患者さんはこのお部屋ができる前から来院していましたので、日々、ベッドサイドで必要に応じて教育を行いながら、患者さんへのケアも行っていました。しかし、新生児の看護を系統立ててしっかりと学んでもらわなければつけ焼刃に過ぎなくなってしまいます。

そこで、タイ日赤大学から新生児ケアの専門家を招聘して、1週間の研修を行いました。この研修には、約20人のナースが参加することができました。レクチャーとデモンストレーションを組み合わせたとても充実した内容で、参加したスタッフは「これで小さな赤ちゃんも怖くない!」というくらいに自信が付いたようです。スタッフの教育はラオ・フレンズ小児病院(LFHC)のキーとなる活動になりますが、病院としての日々の業務をこなしながらスケジュールをやりくりし、捻出した時間を教育に当てるためスタッフも大変です。

この新生児室のオープンにより、開院前に予定していた部署全てが業務を開始したことになります。これからはこのすべての部署での医療サービスと病院運営をより良いものへ発展させるような努力が必要になってきます。終わりのないゴールですが、追求することは明確です。日々の努力あるのみですね。


患者さんのお話です。13歳のMちゃんは、ランプの灯が蚊帳に移り、下肢に大やけどを負いました。傷が回復するには長い時間が必要でした。街から離れた村で暮らしていたMちゃんにとっては、どんなに病院で手厚いケアを受けたとしても、やっぱり村での家族との暮らしが恋しいのです。院内では、出来るだけ早く退院できるようにと、傷の処置が自分でできるようMちゃんに教えることにしました。そして、何度も練習を重ねてやっと本人も私たちも『大丈夫』と自信が持てるようになり、退院です!家では1週間に1度傷をきれいに消毒して、新しいガーゼで覆う作業をやらなければならないので、ガーゼ、包帯、洗浄剤、手袋などたくさん持って帰ることになりました。

数か月の入院を終えた晴れての退院日は、病院の車で近くまで送ることにしました。車に乗り込んだMちゃんは、にっこり。ホント嬉しそうでした。

とはいうものの、2週間後には傷の手当てがきちんとできているか、傷の回復は順調かを見に行く予定にしていました。しかし、運悪く数日間の大雨でMちゃん宅への道が閉ざされてしまい、訪問する道はただ一つ、車+ボート+徒歩を使う迂回路しかありません。6時に病院を出発し、山を4つ越えてやっと到着したのは12時半でした。到着したらホッとしてしまい何をするのか一瞬忘れてしまいましたが、早速Mちゃんに目の前で傷の手当てをしてもらいました。消毒の仕方をおさらいして、傷の状態を確認。傷は順調に回復していました!1か月後には病院へ来てもらわないといけないけど、まずは一安心!

それにしても、こんな道を来なければ医療にかかれないというのは、やっぱり医療は遠い。病院で簡単に「もっと早く来なくちゃだめよ」などとナンセンスなことを言う医療者を作ってはいけないなと思います。私たち医療者も『知らないことを知らない』と常に念頭に置いておかなくちゃ。



2時間の車の後小さなボートに乗り継ぎ



HONDAのボート?(笑)



川をザブザブ~



稲刈り風景を横目にさらに前進、前進!




もうひと山・・・うひゃ~!


フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーの基本理念は“Compassionate care (すべての患者さんを自分の子供と思ってケアする)”ということです。それを毎日の業務の中で伝えていくのが私たち外国人の一番大きな役割ですが、これが浸透するのは、相当時間がかかることでもあります。それが、最近『ん?いい感じ!』ということがあって嬉しくなりました。

プンミー医師がその一人。先日、当LFHCでは確定診断がつかないZちゃんを首都のビエンチャンにある病院へ紹介することになりました。家族にはビエンチャンへ行くほどの経済的余裕はないことが院内の経済アセスメントでわかっていたので、交通費を病院が負担することになりました。・・・が、しかし、Zちゃん家族はビエンチャンのような都会へ行ったことがなく、不安をあらわにしていました。その表情に気が付いたプンミー医師は、ちょうど4日間のオフが予定されていたので、「一緒にビエンチャンへ行きましょう」と付き添い役をオファー。一緒に長距離バスで病院まで行き、先方の病院へ無事引き渡すことができました。残りの3日間も病院へ出向いたり、電話で状況を確認し、またルアンパバーンに戻る前には友人にZちゃん家族のことをお願いしてくるという行き届いた対応に、Zちゃん家族も安心して医療を受けることができたようです。

実はZちゃんの病状は悪性疾患の疑いがあったのですが、ビエンチャンでちゃんと精密検査を受け適切な治療を受けることで、今は完全に回復し、LFHCにフォローアップ受診で来た時には、とても晴れ晴れとした表情でした。 プンミー医師は、医師学校に入学するための試験に2度落ちてしまったそうです。でも、どうしても医師になりたいという気持ちがあり、2年間の独学の末、合格。今は本当に仕事が楽しいと言っていました。こんな医師がたくさん増えてもらいたいですね!どこかで偉そ~にしているあなた!患者さんはちゃんと見てますよ。


診察中のプンミー医師


これもスタッフのいい話。
先日病院へのお客様をお迎えに空港へ行った時のことです。飛行機が遅れてしばし待つことになりました。その待合所でスタッフが見つけたのが、LFHCの募金箱。すごくびっくりしていました。空港へ行くことのない彼らは募金箱があることを初めて知ったようでした。そして、びっくりしながらも、嬉しそうに自らのお財布からお金を出して募金箱へ。 「いろんな人たちに支えてもらっているから自分も」と。金額は少なくても大きな力です。自分たちが子供たちの命を救うんだという気持ちが芽生えているのを感じました。




募金箱に寄付を入れるカンパ看護師とドライバーのケン


今年で4回目を迎えるルアンパバーン・チャリティハーフマラソンが開催されました。昨年までは300~450名ほどの参加者だったのですが、今年は約1,000名にも及ぶランナーが世界各国から参加しました。コースの変更もあり多少の混乱はありましたが無事終了。病院スタッフも、走る人、レースボランティアする人、院内で働く人と全てのスタッフが役割を担って臨んだ大会でした。

今年はフレンズ創設者の井津もニューヨークより来ラオス中で急きょ参加!そして、長期入院で気持ちも落ち込んでいたPちゃんを励まそうと車いすに乗せて7キロ走破!最初は緊張の面持ちだったPちゃんも、ゴールの時には手を挙げて声援にこたえ笑顔も見られました。気分転換になったら良かったかな~と思います。スポーツは団結力を感じますね。院内スタッフのチーム力も、格段にアップしたように感じます。来年もたくさんの方が参加してくださることを楽しみにしております。



Pちゃん、あと残り1㎞!



©Adri Berger
スタート地点で創設者の井津(中央)



今年のマラソンTシャツはこんなデザイン


ちょうどマラソンの時期にいつも来ラオスしてLFHCのためにチャリティーコンサートを開催してくださっているのが、栗コーダーカルテットとお仲間のみなさん。栗コーダーカルテットと言えば、あの『ピタゴラスイッチ』のかわいらしい音楽で有名ですよね。知らない人はいないというほど。今年はローカルアーティストの“カオニャオ”のパフォーマンスもジョイントし、さらに子供たちの心をがっちりとつかんでいました。ぜひ、たくさんの子供たちに観てもらいたいなと思いました。




2年目を迎えたLFHCに新たなマネージメントスタッフが着任していることは今年の初めにお伝えしましたが、10月には新しい看護部長が着任しました。そして、看護の教育を充実させるために看護教育指導者として、サラ看護師も着任しました。1年目は立ち上げに急ピッチで対策を練ることを得意とするスタッフが集まり、2年目からはその内容を充実させ少しずつ発展させることが得意なスタッフが集まりました。どちらも最強メンバーを揃えることができたことは、ラッキーだと改めて思います。

今後はラオス人スタッフにこうしたポジションを担ってもらうための教育も始まります。どんなリーダーシップが誕生するのか楽しみです!



新看護部長のマット看護師(左)と看護教育指導者のサラ看護師(右)


訪問看護で走っていると色々なものを発見します。今回は、たわわになったグアバ~!私、大好物ですが、実はカンボジアでよく当たるという占い師さんのところへ行った時に「グアバは食べないように・・・」と意味深に言われ、食べていなかったのです。でも、こんなになってたら食べちゃう!小さいけど中はちゃんと熟れていました。美味しい~。



グアバゲットに張り切るドライバーのケン君



小ぶりですがいっぱいなってます!



早速ガブリ!(汚いかじり跡、画像悪くスミマセン!)


またまた色々なことがあった2か月でした。日々の忙しさに、去年の今日には考えられないくらいの大進歩を遂げていることに気が付かずにいました。追われながらも時に振り返えること、そして今いる自分を見つめることは大事ですね。

  フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN 代表
  ラオ・フレンズ小児病院 看護師               赤尾 和美


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