2016年 11月 & 12月

今年最後の出来事配信となりました。12か月はアッという間です。今回はスタッフ教育のお話を中心にご紹介いたします。

スリランカで開催された救命救急医療の国際会議にラオ・フレンズ小児病院(LFHC)のドークマイ医師とヴィライヴォン医師が参加し、LFHC におけるビタミンB1欠乏症の症例について発表しました。日本ではまず見られないかと思いますが、ここラオスでは栄養失調の一つとして、B1の極端な欠乏により死に至る症例もあります。産後のお母さんが貧困のため食料が入手できなかったり、産後に独自の食事制限を行う文化的慣習により母乳に含まれるB1が欠乏し、それが赤ちゃんへも影響する結果、病的状態を作り出してしまいます。産後2~3か月でぐったりとして呼吸障害を呈する患者さんにはまず、B1欠乏症を疑うほどです。そして、B1の注射をするだけでみるみる回復するのもその特徴です。彼らの発表は、世界各地から集った参加者に対しても、大きなインパクトになったのではないかと思います。


最後のスライドは“カプチャイライライ”(ありがとうございます)で締めくくり


この会議への参加は、一人の医療ボランティアさんの大きな支援があり実現しました。そのボランティアさんがスタッフの教育の場を広げるために他方面に渡ってLFHCのことを話してくださり、今回の会議主催者側が渡航費用と宿泊を負担してくださったのです。会議にはLFHCの医療教育部長も同行し、彼らの大きな初舞台を喜んでいました。

ちなみにドークマイ医師もヴィライヴォン医師も海外への渡航は初体験。ヴィライヴォン医師は滞在中に食中毒でダウンしていたようですが、「とってもいい経験になりました」と喜んでいました。海外へ出るということだけでもとても色々なことを発見し、学びます。今後も、ラオス人スタッフが海外へ出て成長できるよう、そうした場をどんどん作りたいと思っています。



右からヴィライヴォン医師、ドークマイ医師、主催者、クリス医療教育部長


LFHCでは新たな業務として予防注射を始めました。来院した患者さんすべてに予防注射の有無を確認し、最新の状態になっていない場合には接種します。この業務を開始するにあたり、LFHCのケオ看護師、ジュ看護師、アンポン看護師が県立病院で行われた研修に参加し、正式に開始することを許可されました。LFHCに来ている患者さんには、予防できる病気で苦しんでいる子供たちがたくさんいます。少しでもこれで、病から遠ざけることができたらいいですね。



右からアンポン看護師、ジュ看護師、ケオ看護師


小児科で医療をするにあたり、理解しておくべきとても重要なことの一つは“発達”です。大人と違って子供たちは、その年齢によって体も、心も、出来ることも、変化を遂げます。そこで12月から、発達についての集中3回トレーニングを開始しました。午後数時間の研修ですが、今月は正常の発達、1月は身体的発達の遅れ、3月は知的発達の遅れについて行います。12月の研修にはすでに50名ほどのスタッフが参加し、修得したことを臨床で活かす姿も見られています。医療スタッフに限らず参加可能としていますので、病院スタッフ全員が子供に優しい環境作りに貢献できるようになりますね。



子供の発達と言えば“遊び”。先日Asian Development for Siaabele people (ADDP)がLFHCの子供たちへ遊びの場を提供するイベントを開催してくださいました(写真下)。普通のピンポンは体が動かせないと難しいですが、これは5×30cmほどの板を持ちボールを転がすだけなので、小さい子でも、歩けなくても大丈夫。最初はなんとなく恥ずかしがっていた子供たちも段々エキサイトして、大盛り上がりでした。ADDPの皆さん、ありがとうございました!

LFHCでは、院内随所に遊びを経験できるように工夫をしています。待合室にはお絵かきや塗り絵をできる場所を作りました(写真下)。チャイルド・ライフセラピストをスタッフとして雇用していますので、子供のそばについて一緒に遊んだり、年齢に合わせたラオス語や算数のお勉強もできるようになっています。



写真が小さいですが、正面やや右の水色のユニフォームがチャイルド・ライフセラピストのコクメング君です



外来待合室の大きなテーブルにはいつも子供たちがいっぱいです


下の写真は、HIV検査のカウンセラーの研修で、ロールプレイをしている様子です。HIVに限らず検査前には十分に患者さんへ説明をするべきですが、HIVは陽性であった場合、そのインパクトがライフスタイルや人生に与える影響がとても大きいので、必ず検査前後にカウンセリングをすることが義務付けられてます。臨床心理のカウンセリングとは違うので専門的に心理学を学ぶ必要はありませんが、それでも、見えない心のことを理解しなければなりません。見えないものを学ぶのはとても大変です。文化の違いもあるし、言葉の壁もあるので、どこまで伝わるかなと思いましたが、半日×5日間でじっくりと学んでもらいました。そして、研修最終日には習ったことの総まとめとして、ロールプレイで少しでも実感する時間を作りました。最後の感想は「難しい・・・」でしたが、難しいのだということが分かっただけで目的達成です。これから実際の経験の中で、さらに学びを固めていってもらえたらいいと思います。



ロールプレイではなかなかの名演技!


今年も恒例ヘアーデザイナーさんのボランティア軍団が来ラオス!3日間それぞれ違う村へ行きましたが、合計400名を超える子供と学校の先生、父兄さんの髪切り完了です!一人カットし終わるとすぐに次の子が席に付き、暑い中、立て続けに何十人も切り続けです。女の子はあまり切りたがらないでいたのですが、一人が思い切ってショートにしたことを「わ~!かわいい~!」とみんなが称賛したら、そこからは次々と「短くしてください」とショートヘアが大流行してしまいました。ふふ。シラミがたくさんいたので。短くした方が退治しやすいので、良かったです。この作戦、来年もやってみましょう。皆さん、ご苦労様でした。来年もよろしくお願いいたします。







2016年を締めくくり、サイモン院長からのメッセージです。




4月に院長に就任し24時間365日常に病院のことだけを考えている日々です。とても忙しいですが、ラオスへ来る前から覚悟を決めていましたのでフル回転で頑張っています。そして、実感しているのは、LFHCでは質の高い基本的な医療を提供できる病院だということです。ただし、より専門的な医療となると首都ビエンチャンへ紹介しなければなりません。そこで今の一番の課題はビエンチャンにある専門医、病院との関係構築です。しっかりとしたパイプラインを作りたいと思っています。

これまでに何名かをビエンチャンへ紹介しましたが、患者さんの家族がビエンチャンへ行くこと自体がスムーズにいかないということです。交通費の負担が一番に挙げられますが、それはLFHCが負担をすることで解決できます。それ以上に問題なのは、家族が村から出たことがなく、大きな街へ行くことに恐怖心を抱いていたり、たどり着いても担当するはずの医師が不在であるなど先方の病院の対応がまずく、診察もせずに戻って来てしまったりすることです。経済的なことに加えて、それ以外のことが壁をさらに高くしている状況があります。

こんなことが治療の障害になるとは予測できませんでした。そして、この状況が命に関わることになるのはどうしても避けたいという思いが日々募っています。こうした一つ一つの課題を少しずつ解決しながら、LFHCは少しずつ前進しています。これからもあたたかく見守っていただけますよう、よろしくお願いいたします。





今年もあと数日を残すばかりとなりました。上の写真は一昨日、今年最後の訪問看護で出会った山からの夕日。今年1年のことが色々と頭に巡りました。そして、静かに今年の幕を閉じ、来年が始まります。今年の皆さんからのサポートに対する感謝の気持ちを胸に、来年も新たな発展を遂げたいと思います。よろしくお願いいたします。

  フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN 代表
  ラオ・フレンズ小児病院 看護師               赤尾 和美


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