2017年 7月 & 8月

開院してから2年で院内の施設はかなり整ってきました。予定していた院内各部署の活動もすべて始動。ひと段落ですが、本番はこれからです。箱ものはできても、そこで働く人材が何より重要だからです。年頭にお知らせしたように、今年は人材教育に力を入れ始めました。今回は教育の話題が満載です。

開院から現在まで、院内の各部署の管理をしているのは外国人です。しかし、将来はそのポジションもラオス人に担ってもらうことになります。施設投資がひと段落した今年からは、ラオス人リーダー養成に力を入れ始めました。その一環として、アメリカのグローバルヘルスサービスネットワークレクチャーという会社から5日間の研修を提供していただきました。

研修は、効果的なマネージメント、コミュニケーション、臨床におけるチームのあり方などをゲームやエクササイズを使って楽しみながら身に付けられるよう工夫されており、研修中は笑いが絶えないようでした。11人のラオス人リーダー候補スタッフが参加し、最後に終了証を手にした顔には、すでにリーダーの風格が見えていました。この研修を通して、目の前のことばかりではなく、将来への構想が意識の中に入ってきたように思います。また、将来を担うリーダーとしての自覚も芽生えてきたようです。



終了証をもらって大満足の参加スタッフ



「研修がもっと長かったらいいのに~」と楽しそう!


今年からの課題は、リーダー養成に加えて、スタッフの『専門性』を伸ばすということです。ラオ・フレンズ小児病院(LFHC)は『小児病院』と一括りにしていますが、日々来院する患者さんの中には、専門性を持って診療することが要求される症例もあります。例えば、遺伝性の血液疾患であるサラセミアや発達障害、心疾患、HIV感染症などなど。患者さんにとっても毎回同じ医師の診察を受けられるというのは喜ばしいことで、一貫した医療とケアを受けることができます。スタッフもこれまでは、小児の一般的な医療やケアを習得することが最初のステップとして課せられていました。しかし、徐々に、その中から個別に興味のある分野が出てき始めています。その興味を追求することで、仕事や勉学に対するモチベーションを高く維持することができるのではないかと思います。

専門性の1つとして、サラセミアの専門外来が毎週木曜日に設定され、現在約150人ほどの患者さんが定期的に通院してきています。またさらに、8月からは発達障害児への専門外来もスタートしました。

下の写真は、サラセミア外来で輸血を受ける子供たちです。頻繁に通院し輸血や検査を受けることがストレスにならないように環境を整えるほか、家族へのケアも必須となります。専門性を持つということは、こうした細かなことへも行き届く医療を行う、ということなのです。



首都ビエンチャンのラオ自閉症協会からLFHCに講師が来院。自閉症について詳しく学ぶ3日間の研修コースが開催されました。村へ行っていると自閉症のような行動パターンをしている子を時々見つけます。そして、多くの場合、専門的な診察を受けたことがなく、家族も対応の方法がわからないままに過ごしています。学校でも受け入れ体制が取れていないことが多いようです。新しいことを学ぶスタッフの姿はとてもお楽しそうでした。LFHCでスタートした発達障害児のための専門クリニックで少しずつ研修の成果を実践に活用し、自閉症児とその家族から大いに頼ってもらえるようになりたいですね。



14人のスタッフが研修を受け終了証をもらいました



グループワークもたくさんあり、盛り上がっていました


下は、LFHCスタッフが、ポンサリー郡病院スタッフへ新生児ケア研修を提供している写真です。LFHCで新生児室がオープンしたのは、昨年10月でした。それから1年を経たずに、院外医療スタッフへ研修を提供できるまでに成長したスタッフに、感心するばかりです。

専門性を追求し始めたLFHCが、院外医療スタッフへそのスキルと知識、そして、心のこもったケアを伝授開始です!頼もしい限りです。9月には、LFHCスタッフがポンサリー郡病院へ赴き、研修のフォローアップをする予定です。ラオス国内に広くLFHCの医療が広がる将来が見えてきた気がします。






こちらも専門的な研修の1つ。HIV抗体検査のためのカウンセラー養成研修です。ラオスでは、日本同様にHIVの抗体検査前後にはカウンセリングをすることが義務付けられています。HIV感染のリスクを的確に評価できるスキル、リスクを減らすための知識、そして、微妙な心の動きに対応できるコミュニ ケーションスキルが必要になります。単に、「○○で感染します。○○ではしません」というような知識だけを提供すると認識されがちなカウンセラーの役割ですが、もっと奥深く繊細なものであることを“実感”してもらいたいと構成した研修です(この研修は、筆者が担当しております故、つい力が入ったご報告になってしまう・・・汗)。 3日間の研修で5人の新しいカウンセラーが誕生しました。研修はスタート地点に立ったばかりです。これから実践を経験することで、どんどん成長してくれるはずです。



たくさんのエクササイズで“実感”してもらいました



院内で使用している抗体検査についての説明はラオス人の検査技師さんが担当


日本から、身体に障害がある子供たちに、車いすや座るための装具を作製し提供しているアジア・シーティング協会(ASAP)の皆さんが来院し、LFHCで1日クリニックをオープンしてくださいました。身体に障害を持った子供たちの中には、移動手段がないために学校へ行かれずにいる子もいます。また、身体に合った椅子や車椅子を使用することは発達段階にある子供たちにはとても重要なことです。こんな困難を解決してくださるサポートに、大変感謝です。

今回は8人の障害を持つ子供たちへ車いすや椅子が提供されました。子供たちも家族も「わ~!こんなに動ける!」「いつも抱えていなければいけなかったけど、これでとても楽になります」と大喜び。嬉しそうな顔に私たちも心躍る気分になりました。 さらに40人以上もの子供たちがこうした装具を待っています。今後も引き続きのサポートをお願いしたいですね。





ルアンパバーンの市街に設置されたフレンズビジターセンターでは、毎月、献血キャンペーンを行っています。ラオ赤十字血液センターの協力の元、8月までに6回実施し、毎月10~30人の方々が献血にご協力をいただいています。その中にはLFHCスタッフや隣接する県立病院スタッフも含まれていて、血液の必要性を多くの人々に知ってもらおうと頑張っています。8月の開催時には、ルアンパバーンで教育に携わるオーストラリア人の方からの依頼で、LFHC検査技師のアノウシン君が子供たちに献血の方法や、どのように使われるのかなどを説明する機会がありました。

ラオスでは、献血に対する神話が多く語られており、身近なものではありません。このキャンペーンが少しでも事実を認識することにつながると嬉しいですね。


LFHCスタッフや県立病院から「自らお手本に!」と献血



真剣にアノウシン君の話に聞き入る子供たち


私たち外国人がLFHCで担う役割は、ラオス人スタッフへの教育です。知識やスキルだけではなく、心のこもった質の高い医療を提供することを身に付けてもらいたい、日々の業務を通して“実感”してもらいたいと思っています。これは、カンボジアのアンコール小児病院でも目標としていたことでした。アンコール小児病院はスタッフの弛まない努力により、その目標を達成しました。そして、ラオス人スタッフもその道が見えて来てるなぁ・・・と最近感じます。

ある日、訪問看護に向かう小さい渡し舟で見たスタッフの背中。なぜか急に、シャツに書かれた病院名と重なって、「LFHCを背負っている!」という自信がみなぎっているように感じられました。開院当初は、多少不安がなかったわけでもなく(汗)・・・でしたが、2年半を過ぎて、立派に着実に成長していると感じます。人材を育てることはとても時間がかかります。そして、目に見えにくいものです。ある日突然「おっ!」と気が付くものです。これからも「おっ!」がたくさんあるといいな~と思いながら、1人にんまりとボートに乗っていました。頑張れ!頑張れ~!



ラオスっぽいお写真をご紹介いたします。 下の写真は、村でのわんこのお昼寝。というよりは、爆睡中です。近くを人が歩こうが、声かけようが全く 起きない。お疲れなのかしら?(笑)その下の写真は、ある日ひょっこりと私のオフィスへ立ち寄ったニャンコ。ぼや~んとしてて、全く逃げない。自由だな~。うふふ。





村での1コマ(2コマですね!)。下は、村の鍛冶屋さんが斧を作製中です。カンカンカ~ンといい音が鳴り響いていました。村でよく遭遇するこの『作ってる感』っていいなぁと思います。その下は、雨季で増水した川で水浴び。ヤッホーって感じです!気持ちよさそうで、患者さんの家へ行く途中でなければ私も飛び込んでました。







ラオスでは、雨季も後半に差し掛かってきました。雨季と乾季しかない国ですが、季節というのは時間の経過を伝えてくれますね。そして、身の回りの変化を感じる目を開かせてくれます。この次の『出来事』の頃はもう雨季は終わっているのかな・・・と思いながら、そして、またこれを書きながらスタッフの成長を感じているのだろうな・・・と思いながら今月の筆を置きます。

  フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN 代表
  ラオ・フレンズ小児病院 看護師               赤尾 和美


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