赤尾看護師今月の報告 2009年 

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Healing Children. Healing Cambodia. SM

  赤尾和美アンコール小児病院看護師 
  「5月の出来事」


  今月は、心臓手術と訪問看護の話題を中心にお送りします。

シンガポールの心臓外科チームがAHCを訪れ、7人の先天性の心疾患を持つ患者さんの手術、さらに、肺に異常のある患者さんが救急で飛び込んできたので、その手術も行われました。これらすべての患者さんの手術はもちろん成功し、術後の経過も良く、全員退院することができました。
これまでにもAHCでは、胸を開かないで行う心臓手術は何度も行われてきましたが、今回は、難易度の高い胸を開く手術が初めて行われたのです。この手術には、様々なリスクも伴いますが、カンボジアには、この手術を必要とした子供たちがたくさんいます。AHCの外科チームで働くスタッフは、この難しい手術の技術と技法を学ぼうと、一生懸命に今回のチャンスに取り組んでいました。
シンガポールのチームの皆さんには、この手術を行ってくださったこと、そして、将来AHCスタッフが同じ手術が行える可能性を与えてくださったことに、大変感謝しています。実際に自分たちの手で行えるまでにはまだ時間が必要ですが、一歩一歩の前進が将来につながると、みんなが信じて頑張っています。


訪問患者さんのセンホン君、4歳です。センホン君は、毎日きちんと決まった時間にお薬を服用しなければなりません。しかし、4歳のセンホン君には、時間の概念や薬の重要性を覚えるよりも、遊ぶこと食べることの方が最優先。家族がお薬の管理をしてくれないとなりませんが、ご覧のように大家族で住んでいるにもかかわらず、責任を持ってお薬の管理をしてくれる人がいません。おばあちゃんは病気がちで、お父さんは、軍に所属し転勤が多く、またお母さんは、毎日食べていくには働かなくてはなりません。伯母さんや従兄なども同様に入れ替わり立ち替わり仕事へ出てしまいます。遠く離れた患者さんの服用状態を確認するのは直接行くしかなく、そこで残っている薬の数を数えるだけでも一苦労です。訪問の度に薬を正確に服用することの説明を繰り返し、頭では分かっていても行動が変わるまでには時間がかかり、根気よく訪問を繰り返し説明を続けること、その中から障害となっていることを見つけ出し、解決策を家族と見つけていくことが、訪問看護では欠かせません。

この写真は、カンボジアにおける訪問看護の意義をお伝えできるのではないかと思います。患者さんの住んでいる環境は、実際にその場所へ行ってみないとわかりません。病院での健康教育、予防教育は、一般的な情報です。それが、患者さんの生活に活かされるかどうかは、その後のフォローアップにかかっていると言っても過言ではありません。
皆さんがお風呂といって想像するものは、豊富なお湯に湯船、石鹸でしょう。でも、写真のように家の近くにある水たまりがお風呂であることはしばしばあります。この状況で、病院で教えた情報を活かすためには個別な情報提供へと形を変えないとなりません。カンボジアでは、家族の中で子供同士が世話をし合うことが多くあります。15歳の長男稼ぎ頭であるオイちゃん(1歳7カ月)の家庭では、13才のお姉ちゃんがいつも面倒をみているのですが、このお姉ちゃんがわかるような説明をしなければ、提供した情報も全く無駄なものになってしまうのです。これを知らずして、教えたことで満足してしまっては、真の教育とは言えないですよね。

また、丸太一本でつながった橋を渡り、たどりつく家。これも稀ではありません。雨期で水位が上がれば、この橋だって使い物になりません。中には、道がなくなってしまうこともあり、患者さんの家までたどり着けないということもあります。訪問看護へ行くことが“探検隊”のような時もあるのですよ。逆を返せば、こういったところから患者さんはAHCへ来ているということで、医療への距離が遠いことを実感します。街が急速に繁栄している状況で、そこから取り残されている人たちがたくさんいるのです。子どもが病気になっても、『もしかしたら、明日には良くなるかも……』と、病院へ行くことを1日延ばしにしてしまうのも理解できますね。
訪問看護は、ここカンボジアでは、ただ単に家庭で診療をするという意外に様々な意味合いを持っているのです。


毎年恒例となっているヘアーデザイナーのボランティアさんが日本とニューヨークから今年も来てくださいました。毎日300から600人も来るAHCでは混乱が予想され、昨年からはAHCが支援する孤児院へ出向き“出張髪切り団”として頑張っていただいています。
この活動に賛同し、参加を希望する方が年々増え、現在では2グループに分かれ、年に2回の活動をしてくださっています。
孤児院の子たちも「次はいつ?」「もうそろそろ来るよね?」と、とても楽しみにしています。
子供たちは、切ってもらっている間は、少々不安そうにジーッとしているのですが、終わるや否や鏡でチェックし、キャーキャーと大騒ぎです。
美容師さん達は、いつもは設備の完備された美容室でのお仕事ですが、孤児院にはそんな施設はありません。大抵は“青空美容室”です。みんな汗をびっしょりかき、毛だらけになって、「とにかく人数をこなさなくちゃ」と、後から後から湧いてくるように集まってくる子どもたちを相手に奮闘してくださいました。
活動は3日間で、8件の孤児院を回ってくださいました。お疲れ様でした!そして、またよろしくお願いいたします。


訪問看護のお話が出たので、追加として、スタッフの喜ぶ顔をみなさんへお見せしたいと思いました。
実は、私(赤尾和美)が日本滞在中に、重要な報告書の締め切りがありました。そのために、私は、スタッフから必要なデータをたくさん送ってもらわなければならなかったのですが、データ管理をしているスタッフのコンピュータが壊れ、修復不可能。運悪く、他のスタッフのコンピュータも同時に壊れ、データが送れない!!それを知らぬ私は、日本からせっつくように「早く!早く!今すぐ!!」とプレッシャーをかけていたのですね。そして、にっちもさっちもいかなくなり、「かずみ、実は、コンピュータが皆壊れちゃって……」と告白したのです。困りました。冷汗がタラタラで、胃がキューっと痛くなるほどでした。
……とその時、お助けマンが登場!私の同窓生がちょうどその時に、AHCのためにバザーを開き、ちょうどコンピュータ1台購入が可能なほどの寄付が集まっていたのです。早速、同窓生には許可を得て、デスクトップのコンピュータを購入し、無事に報告書の提出もできました。
スタッフが何より喜んでいました。私からのガミガミを聞かなくて済んだんですもんね(いつもは優しい私なのですよ……念のため)。

開院当初からAHCで働くテップ・ナビー看護師(写真右端)が初めての研究に挑戦しました。アメリカにあるブラウン大学からアラリオ医師(写真左)とロックネイ医師(写真右から2番目)のご協力を得て、『限られた状況下における医療サービスの利用とその弊害となること―カンボジア・アンコール小児病院に来院した家族への聞き取り調査』と題し行われました。
その調査の結果をこの度発表することになり、ナビー看護師は、両医師の支援によりアメリカへ行きました。
今まで医師による研修発表はたくさん機会がありましたが、看護師によるものはまだ2例目です。看護師がもっと世界の場へ挑戦するチャンスが訪れるといいですね。


今、世界中で広まっている豚インフルエンザ(H1N1インフルエンザ)ですが、WHOからの発表でその警戒レベルが6へ引き上げられました。シェムリアップも観光の街ですから、いつどこからウイルスが入ってくるかわかりません。そこで、AHCは、シェムリアップ市内にある2件のホテルスタッフ(合計80名)へ、豚インフルエンザとその予防についての研修を提供しました。
多くのカンボジアの若者たちは、学ぶチャンスを探しています。今回も研修に興味深く参加してくれました。

水上生活の村へ検診に行く途中で、水上結婚式の準備に追われる光景を発見しました。大きな筏に屋根を付けたような結婚式場に色とりどりのカーテンが取り付けられ、カンボジアの結婚式にはつきものの大音響の音楽の中、結婚式のデコレーションが行われていました。
準備に関わる人たちも船で乗りつけ、お嫁さんもお婿さんも船で式場までやってきます。大きな船が横を通ると“ゆ〜ら、ゆ〜ら”とする“ゆらゆら結婚式”です。

結婚式は乾季にすると決まっていたのですが、最近ではそのこだわりもなくなってきたようです。2名のAHCスタッフが5月に結婚しました。



ICUの病棟クラークのキムチュンさん(左)と薬剤師のセクラさん(右)です。2組が身にまとっているのがカンボジアの結婚式で着る伝統的な衣装です。結婚式自体もカンボジア独特の文化を象徴していますが、何と言っても、厚さ10センチはあるかというほどのアルバムが埋まるほどの写真を撮りまくるのには、驚きです。一生の2人の宝物になるのですね.



5月の出来事でした。

雨季に入ったのですが、この数週間はあまり雨が降りません。これでは、お米ができず、農民たちの収入が厳しい状況になってしまいそうです。これからの雨に期待したいところです。

アンコール小児病院
赤尾和美